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横浜地方裁判所 昭和54年(わ)468号 判決

裁判所書記官

保田昊児

国籍

韓国

住所

横浜市神奈川区三ツ沢東町四番二九号

会社役員

田中明こと

李明

一九三四年八月二日生

本店所在地

横浜市西区南幸二丁目三番五号

商号

韓明興業株式会社

右代表者代表取締役

李明

右李明に対する所得税法違反、法人税法違反、右韓明興業株式会社に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検査官近藤清出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人韓明興業株式会社を罰金四〇〇万円に、被告人李明を懲役一年及び罰金八〇〇万円に、それぞれ処理する。

被告人李明に対し、右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人李明に対し、この裁判の確定した日から三年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人韓明興業株式会社(以下被告会社という)は、横浜市西区南幸二丁目三番五号に本店を置き、旅館業等を営業目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人李明(以下単に被告人という)は、同市神奈川区三ツ沢東町四番二九号に居住し、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括掌握していたものであるが

第一  被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名定期預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿したうえ

一  昭和五〇年六月一日から同五一年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三一四二万二七四九円(別紙一修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同五一年七月三一日、当時同市中区野毛町に所在していた所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三五六万四三四二円でこれに対する法人税額が九九万七九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一一七二万八八〇〇円(税額の算定は別紙五税額計算書の(1)参照)と右申告税額との差額一〇七三万九〇〇円を免れ

二  同五一年六月一日から同五二年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二六六三万八七二四円(別紙二修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同五二年八月一日、同市中区山下町三七番九号所在の所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、所得金額は六八万九二二円でこれに対する法人税額が一九万四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額九八一万五二〇〇円(税額の算定は別紙五税額計算書の(2)参照)と右申告税額との差額九六二万四八〇〇円を免れ

第二  被告人は、自己の所得税を免れようと企て、不動産賃貸収入の一部除外及び貸付金に対する受取損害金収入等の金部を除外し、仮名定期預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿したうえ

一  昭和五一年分の実際総所得金額が二三〇九万八四四八円(別紙三修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同五二年三月一四日、同市神奈川区栄町八番六号所在の所轄神奈川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は四五五万六四一〇円でこれに対する所得税額が一万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額七六三万一一〇〇円(税額の算定は別紙六税額計算書の(1)参照)と右申告税額との差額七六一万八六〇〇円を免れ

二  同五二年分の実際総所得金額が四六七七万四五六六円(別紙四修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同五三年三月一四日、前記神奈川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は五四〇万四三五〇円でこれに対する所得税額が六万六〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二一五三万三一〇〇円(税額の算定は別紙六税額計算書の(2)参照)と右申告税額との差額二一四六万七一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(注) 判示各事実及び別紙一ないし四の各修正損益計算書の勘定科目について、これと直接対応する証拠を以下の各証拠説明の際に証拠番号として引用する。なお、参考として証拠等関係カード記載の証拠番号を括弧内に漢数字で示す。

1  被告人の当公判廷における供述

2  第三、四回公判調書中の被告人の供述部分

3  被告人の検察官に対する次の各供述調書

(1)昭和五四年二月二八日付(乙一)、(2)同年三月一日付(乙二)、(3)同月四日付(乙三)、(4)同月六日付(乙四)、(5)同月七日付(乙五)、8(8)同月八日付(乙六)

4  被告人の大蔵事務官に対する次の各質問てん末書

(1)昭和五三年三月二四日付(乙一〇)、(2)同年六月一六日付(乙一一)

5  第五、六回公判調書中の証人鈴木慶一の供述部分

6  次の者の検察官に対する各供述調書

(1)関野裕(甲一五)、(2)橋本幸子の昭和五四年三月一日付(甲二三)、(3)同人の同月一四日付(甲二四)、(4)新井スミ(甲二五)、(5)金田アヤ子(甲三九)、(6)宮川進(甲四四)、(7)李七斗(甲四五)、(8)井上録郎(甲五五)、(9)柳川武(甲九二)、(10)津田覚(甲九五)、(11)津田弘(甲九六)、(12)鈴木慶一の二通(甲一〇八、一〇九)、(13)加藤三枝(甲一一〇)

7  次の者の大蔵事務官に対する各質問てん末書

(1)橋本幸子(甲二二)、(2)岩井洋介(甲四〇)、(3)蘆恵卿(甲四九)、(4)阿部幸次(甲五八)、(5)鈴木留次郎(甲五九)、(6)鈴木重夫(甲六〇)、(7)小林秀雄の二通(甲六七、六八)、(8)藤田真弓(甲八八)、(9)柳川武(甲九一)、(10)津田覚(甲九四)

8  大蔵事務官作成の次の各調査書

(1)売上除外調査書(甲一六)、(2)簿外仕入調査書(甲一七)、(3)生命保険料調査書(甲一八)、(4)簿外給料調査書(甲一九)、(5)事業税調査書(甲四三)、(6)受取家賃地代調査書(甲五六)、(7)固定資産税調査書(甲六三)、(8)火災保険料調査書(甲七一)、(9)利子所得調査書(甲七六)、(10)受取損害金調査書(甲八一)、(11)貸付金利息調査書(甲八九)、(12)貸付金調査書(甲九三)、(13)支払手数料調査書(甲一一二)、(14)支払利息等調査書(甲一二〇)、(15)定期積金に対する給付補填備金調査書(甲一二六)、(16)減価償却調査書(甲一三〇)、(17)修繕費調査書(甲一三二)

9  大蔵事務官作成の査察官報告書二通(甲九〇、一六七)

10  大蔵事務官作成の検査てん末書(甲一二七)

11  次の者作成の各証明書

(1)嘉戸時夫(甲七五)、(2)飯田幸夫の昭和五三年一〇月九日付(甲七七)、(3)横山進(甲七八)、(4)岩崎忠雄(甲七九)、(5)宗像幹夫の同年一〇月七日付(甲八〇)、(6)安藤常美(甲八六)、(7)岸田宝三(甲八七)、(8)石井稔(甲一二五)、(9)飯田幸夫の同年六月二六日付及び同年七月五日付(甲一六五、一六六)

12  次の者作成の次の各表題の各回答書

(1)  阿部幸次作成の「取引内容照会に対する回答」(甲五七)

(2)  宮崎正男作成の右同(甲一一三)

(3)  野瀬高生作成の右同(甲一一四)

(4)  大野英雄作成の右同(甲一一五)

(5)  肥田直美作成の右同(甲一一六)

(6)  加藤常治作成の右同(甲一一七)

(7)  清水泰一作成の右同(甲一一八)

(8)  鈴木信次郎作成の右同(甲一一九)

(9)  嵯峨忠彦作成の「取引内容の照会について回答」(甲七二)

(10)  續橋一男作成の「税の納付状況照会に対する回答」(甲六四)

(11)  中村知夫作成の右同(甲六五)

(12)  藤原照男作成の右同(甲六六)

13  川村修作成の申述書(甲七四)

14  横浜市建築局長作成名義の捜査関係事項照会回答書(甲一七五)

15  次の各登記簿謄本

(1)  昭和五三年九月二九日付横浜地方法務局登記官作成(被告会社についてのもの乙九)

(2)  昭和五四年二月二〇日付横浜地方法務局神奈川出張所登記官作成二通(甲一一一)

(3)  昭和五五年九月二四日付横浜地方法務局登記官作成(甲一七一)

16  大蔵事務官作成の次の各脱税額計算書

(1)  昭和五四年三月一六日付(自昭和五〇年六月一日至昭和五一年五月三一日のもの、甲四六)

(2)  同日付(自昭和五一年六月一日至昭和五二年五月三一日のもの、甲四七)

(3)  同年二月七日付(甲一二八)

(4)  同年三月一六日付(昭和五二年分のもの、甲一二九)

17  押収してある次の各証拠物

(1)  売上メモ八七枚(昭和五四年押第四〇一号の一の1ないし29、甲二〇)

(2)  売上メモ一袋(同号の二、甲二一)

(3)  支払明細表コピー一級(同号の三、甲三七)

(4)  支払明細表一冊(同号の四、甲三八)

(5)  昭和五一年五月期法人税確定申告書一袋(同号の五、甲五〇の二)

(6)  昭和五二年五月期法人税確定申告書一袋(同号の六、甲五〇の三)

(7)  昭和五一年分所得税確定申告書一袋(同号の七、甲五三)

(8)  昭和五二年分所得税確定申告書一袋(同号の八、甲五四)

(9)  建物土地賃貸借契約書一袋(同号の九、甲六一)

(10)  領収証一袋(同号の一〇、甲八四)

(11)  第六回口頭弁論調書正本一通(同号の一一、甲八五)

(12)  入金票等一〇枚(同号の一二の1及び2、甲一三三、一三四)

(13)  昭和五一年分収支明細書一枚(同号の一三、甲一三五)

(14)  メモ(名刺に書かれたもの)一枚(同号の一四の1、甲一三六)

(15)  領収書二枚(同号の一四の2及び3、甲一三七、一三八)

(16)  印鑑証明書二通(同号の一四の4及び5、甲一三九、一四〇)

(17)  書類袋一枚(同号の一五の1、甲一四一)

(18)  土地売買契約書一通(同号の一五の2、甲一四二)

(19)  買戻付土地売買契約書一通(同号の一五の3、甲一四三)

(20)  領収書一枚(同号の一五の4、甲一四四)

(21)  土地登記簿謄本一通(同号の一五の5、甲一四五)

(22)  書類袋一枚(同号の一六の1、甲一四六)

(23)  契約書一通(同号の一六の2、甲一四七)

(24)  書類袋一枚(同号の一七の1、甲一四八)

(25)  所有権移転請求通知書二通(同号の一七の2及び3、甲一四九、一五〇)

(26)  抵当権設定抹消請求通知書一通(同号の一七の4、甲一五一)

(27)  買戻付土地売買契約証書一通(同号の一七の5、甲一五二)

(28)  根抵当権設定契約証書一通(同号の一七の6、甲一五三)

(29)  根抵当権設定取引契約証書一通(同号の一七の7、甲一五四)

(30)  昭和五二年分所得税確定申告書一通(同号の一八、甲一五五)

(31)  通知預金計算書等一綴(同号の一九、甲一五六)

(32)  済総合口座通帳一冊(同号の二〇、甲一五七)

(33)  メモ三枚(同号の二一の1ないし3、甲一五八ないし一六〇)

(34)  便せん紙に書かれたメモ一冊(同号の二一の4、甲一六一)

(35)  書類袋一枚(同号の二二の1、甲一六二)

(36)  連帯借用証書一通(同号の二二の2、甲一六三)

(37)  承諾書・委任状一通(同号の二二の3、甲一六四)

(38)  済普通預金通帳一冊(同号の二三、甲一七二)

(39)  昭和五二年分所得税修正申告書一通(同号の二四、甲一七三)

(所得税法違反事件の各争点に対する当裁判所の判断

一 受取損害金について(別紙三及び四の各11)

弁護人は、昭和五一年分及び昭和五二年分の各受取損害金は、被告人個人が日進商事株式会社に無利子で貸付けた一億円の金員を更に同会社が広川志津江に貸付けたことによって生じたものであり、被告人の個人所得ではない旨主張する。よって、この点につき検討するに、前記口頭弁論調書(証拠17の(11))、弁護人提出の和解調書写しによれば、右金員貸借の当事者は、一見日進商事株式会社と広川志津江であったかのように窺われるが、被告人は、検察官及び大蔵事務官に対して「日進商事株式会社は休業中の休眼会社でしたから、私個人が貸付けたのを便宜上、同会社の名義を使ったのであり、同会社に私の金を貸して会社が広川さんに貸付けたわけではありません」旨供述しており(証拠3の(2)、4の(1)(2))、別紙八掲記の関係証拠によれば、日進商事株式会社は設立後昭和四三年ころから休業状態になり、昭和四九年一二月三日に商法四〇六条ノ三の規定により職権で解散登記がなされ、昭和五二年一一月二八日に継続登記がなされるまでいわゆる休眠中であったこと、受取損害金の預金の際他人名義を使用していること、右の昭和四三年ころ以降は法人としての所得の申告を全く行っていないこと等が認められるのであって、これらの状況にかんがみると、受取損害金が個人所得である旨を認めた被告人の右自供は十分信用するに足りるものであると言わなければならず(一般的にいって、かかる高額の貸付けを個人ですることは稀であろうが、そのことから直ちに以上の認定を左右すべきいわれはない。)、本件受取損害金は被告人の所得に帰属すると認めるのが相当であるから弁護人のこの点に関する主張は採用できない。

二 昭和五二年分の家賃収入について(別紙四の〈1〉の当期増減金額中一五〇〇万円分)

弁護人は、鈴木慶一からの家賃収入一五〇〇万円は保証金として預かったもので、右金員は将来同人に返却されるべきものであるから被告人の所得とはならない旨主張するので検討するに、被告人の当公判廷における供述、鈴木慶一の証言(証拠1、5)及び弁護人提出の建物賃貸借契約公正証書謄本によれば、右鈴木が代表取締役をしていた株式会社ホテル横浜と被告人との間で昭和四二年五月一日右ホテル横浜の建物について賃貸借契約をするに際し、一五〇〇万円の保証金(ただし、右公正証書の文言では一〇〇〇万円)を支払う旨の約定をしたが、結局、右保証金は契約の解消時(昭和四九年五月)まで支払われることなく、その後昭和五二年五月ころ、被告人が右約定の履行として一五〇〇万円を受領したというのであって、右金員の性質の点は一応別として、右金員授受の経過についてはこれをそのまま認めることができるのであるが、右公正証書の文言なかんずくその第八ないし一〇条の文言に徴すると、右の保証金は、契約締結とほとんど同時に相手方に支払われるべき敷金的性格をも帯有したものとして約定されていることが窺われ、契約解消後にそのような保証金が支払われたものとはにわかに認め難く、契約解消時までにこれを支払っていなかった右鈴木としては、賃料の不払い、建物の損害の発生等の事由の格別認められない本件では、せいぜい契約期間中に被告人が右保証金相当額を事実上利用し得なかったことに伴なう直接の損失のみを補償すれば十分であったと認められるところ、被告人は検察官に対する供述調書中で「契約を締結する際、鈴木から保証金の提供を受けることで賃借料を安くしていたところ、契約が解消するまで保証金の提供がなされなかったため、賃貸料の差額についての追加的意味合いで一五〇〇万円を鈴木から支払ってもらった」旨供述しており(証拠3の(3)(4))、右鈴木も検察官に対する供述調書中で同趣旨の供述をしているのであって(証拠6の(12))、右各供述内容は、右金員の性質が前記公正証書に定められた保証金であったとの趣旨の前記被告人の当公判廷における供述及び鈴木慶一の証言よりも実態に則した合理的な内容というべきであり、結局、右金員は被告人が賃貸料の追加として右鈴木から取得したものと認めるのが相当であるから、この点に関する弁護人の主張も採用できない。

三 昭和五二年分の修繕費について(別紙四の〈5〉)

弁護人は、被告人がホテル横浜の建物につき昭和五二年中に八五〇万円を出資してこれを補修、改築したのは右建物が付近一帯の地盤沈下により亀裂が生じて危険となり、横浜市役所から改善命令が出されたために行なわれた工事で、いわば災害による原状回復に外ならないからその金額を修繕費とすべきものである旨主張するので検討するに、関係証拠によれば(証拠1、11の(1)、13、14)、右建物のコンクリート造張壁部分に転倒の危険があったため、横浜市から、昭和四七年一〇月二三日付で改善工事の勧告が出されたこと、そのころ右建物(二階建の建物に更にかぶせる形で三ないし五階部分を増築したもの)の二階建部分が取り壊されたまま放置されていたが、被告人は、昭和五二年になってから本件補修改築工事をしたものであることが認められ、更に見積書(証拠13)によると、その工事内容は、従前客室として使用していた右二階建の建物部分について一階を駐車場に二階を事務室に用途変更する根本的な改築であって税務処理上資本的支出に該当するものと認めざるを得ず、ただ右工事費中外壁廻り補修工事費としての四九万三八一四円(工事費見積内訳中外壁廻り工事費六一万七二六八円から工事費全体の値引率二割を差引いた金額)のみが修繕費として認められるものであるから、工事費全体を修繕費とすべきである旨の弁護人の主張は採用できない。

四 昭和五二年分雑収入について(別紙四の14)

弁護人は、被告人が鈴木慶一から同人所有の土地の売却方を依頼された際に同人との間で取り決めた売買価額と実際価額との差額を被告人の雑収入とされたことについて、右売買に関し被告人が支払った一五〇万円の手数料は、本件雑収入を得るための経費であり、そうでないとしても鈴木に対してこの分についての求償権を放棄しているから右手数料分は雑収入から控除されるべきである旨主張するが、別紙八掲記の関係証拠によれば、右手数料は、本来主たる右鈴木が支払うべきものを被告人が立替えたものであり、本件雑収入として認められる差額分九六五万七六〇〇円とは全く別個の資産勘定に属する債権と認めるべきであって、右手数料を本件雑収入の経費としてみることも雑収入から控除すべき性質のものとみることもできないから、被告人が手数料分を右鈴木から請求する意思を放棄しているか否かにかかわらず、弁護人の右主張は採用できない。

(法令の適用)

一  被告会社につき

判示第一の一、二の各所為は、いずれも法人税法一五九条、一六四条一項に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金四〇〇万円に処する。

二  被告人につき

判示第一の一、二の各所為はいずれも法人税法一五九条に、判示第二の一、二の各所為はいずれも所得税法二三八条にそれぞれ該当するので、各所定刑中、判示第一の一、二の罪については懲役刑を選択し、判示第二の一、二の罪については懲役刑及び罰金刑を併科することとし、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については反法四八条二項により判示第二の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一年及び罰金八〇〇万円に処し、同法一八条を適用して右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永井登志彦 裁判官 高橋隆一 裁判官 柴出寛之)

別紙一

修正損益計算書

韓明興業株式会社

自 昭和50年6月1日

至 昭和51年5月31日

〈省略〉

別紙二

修正損益計算書

韓明興業株式会社

自 昭和51年6月1日

至 昭和52年5月31日

〈省略〉

別紙三

修正損益計算書

李明

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

別紙四

修正損益計算書

李明

自 昭和52年1月1日

至 昭和52年12月31日

〈省略〉

別紙五

税額計算書(法人税)

(1) 事業年度 自昭和50年6月1日至昭和51年5月31日(証拠16の(1))

〈省略〉

(2) 事業年度 自昭和51年6月1日至昭和52年5月31日(証拠16の(2))

〈省略〉

(注) 国税通則法118条1項により1,000円未満切捨

別紙六

税額計算書(所得税)

(1) 昭和51年分(証拠16の(3))

〈省略〉

(2) 昭和52年分(証拠16の(4))

〈省略〉

(注1) 国税通則法118条1項により1,000円未満切捨

(注2) 同法119条1項により100円未満切捨

別紙七

証拠と勘定科目との対応表(法人税)

〈省略〉

別紙八

証拠と勘定科目との対応表(所得税)

〈省略〉

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